研究課題
若手研究(A)
本年度は夏期にフランスにおける実地調査を実施した。なかでも、フランス国立図書館(BNF)手稿史料部において、先行研究が未利用と思われる重要史料を発見するなど、史料調査の面では大きな前進があった。特に重要と思われる史料は、革命期の議会が全国規模で行った青銅製品の徴発の量を記録した台帳である。この中に、週ごとに各地で集められた鐘の個数と量も記録されており、本研究計画の主目的である教会の鐘を中心とする政治と宗教の関係性を明らかにする上で大きな意義を持つものである。ただし、これまで革命期の財産没収や徴発による国有財産形成の問題は、研究テーマに含めておらず、深く追求してこなかった。フランス革命期の国有財産問題は先行研究が手厚い分野である。そのため、二次史料の収集と追加調査に手間取り、年度内に業績の発表に至らなかったのは残念である。また今年から、インターネット書店amazon.frのマーケットプレイスで、安価に19世紀の石版画を購入できるようになったのも大きな変化である。本年度は、フランスの司教の着座式や教会の建立式典、様々な宗教行列などが描かれたものが入手できた。今後は、文字史料に加えて、この種の図像史料も活用しながら研究を進めていきたい。本年度の研究成果発表は、主に東京大学文学部・深沢克己教授を研究代表者とする、科研費による共同研究「ヨーロッパにおける宗教的寛容と不寛容の生成・展開に関する比較史的研究」の口頭報告をその場に選んだ。この研究会は宗教と政治の関係性に関する専門家が集められており、有益な助言を多く得られた。本研究と並行して、この共同研究に参加することで、これまでも高い相乗効果が得られている。本研究の成果も、部分的にこの共同研究をまとめた論文集に反映されている。ただ、この論文集は年度内に刊行決定に至らず、今もなお発刊準備中に留まっているのは惜しまれる。
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