研究課題
若手研究(A)
本研究では、平成14年度から平成15年度に渡って前方後円墳築造の南限域である鹿児島県大隅地域において古墳の調査を実施してきた。本年度はその成果を整理し、総括することを中心に作業を進めた。これまでの調査では、古墳築造の境界域として古墳築造の本質的な意義を追求し得る重要な位置づけにありながら、学術調査事例のなかった大隅地域において、岡崎古墳群というフィールドを選びその古墳時代墓制の実態解明を進めてきた。その結果、次のような成果を得た。1.新たに岡崎20号墳という粘土槨を主体部とする前方後円墳を発見し、また古墳時代前期後半に位置づけられる土器を確認した。2.岡崎15号墳の測量調査を実施し、新たに帆立貝式前方後円墳である可能性が高いことを確認した。3.岡崎18号墳において古墳に従属する初期の大型地下式横穴墓2基を発見し、発掘調査した。4.岡崎18号墳において初期須恵器・朝鮮半島系鉄器・南海産貝輪など広域流通材が多数出土した。そのほか、前方後円墳周辺で地下式横穴墓・土壙墓・石棺墓などが最近検出された宮崎県高城町牧ノ原古墳群や良好な鉄器が出土した同町石山高取原の初期地下式横穴墓出土遺物などの分析を行った。その成果は高城町教育委員会の調査報告書として発行される予定である。本年度はこれらの成果の分析を総合し、その評価について研究を進めた。その成果は日本考古学協会総会での研究発表や発掘調査概報の出版などを通して公表している。研究は今年度で一区切りとなるが、日本列島の国家形成を地域側の視点で再構築することや広域交流の視点からの分析などにおいて、今後とも継続的な調査研究が必要な問題提起をなしえたと考えている。
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日本考古学協会2004年度総会研究発表要旨