研究課題
若手研究(A)
本年度は、前年度までの研究成果として得られた平和構築活動の理論的枠組みを用いながら、旧ユーゴスラヴィアを中心とする地域での平和活動についての資料・情報収集、および実地調査を行い、研究の最終的整理作業にあたった。平成16年11月には、二度目となるボスニア=ヘルツェゴビナでの実地調査を行い、多くの国際機関職員および現地住民の方々との面談を行なった。3年間の研究で得られた成果の部分的要約は、平成17年3月にハワイのホノルルで開かれた国際学学会年次大会において口頭で報告し、専門家との意見交換もさらに深めることができた。また部分的な研究成果は、随時国内の関連研究者との間の意見交換の対象とし、さらなる精緻化に努めてきた。紛争(後)社会に永続的な平和を構築するための戦略を作るために有益な概念として着目されているのが、法の支配である。法の支配の文化が広まり、法の支配の制度が定着すれば、たとえ社会内に対立が起こった場合でも、武力紛争にまで発展させることなく処理できると期待されるからである。旧ユーゴスラヴィア地域のボスニアやコソボにおける国際平和活動では、欧米諸国の主導で行われ、法の支配を確立するという戦略をもとにした措置が大々的にとられている。しかしその歴史には紆余曲折もあった。当初、ボスニアにおいては、選挙を通じた民主化が平和への鍵であるという認識が極めて強かった。しかし度重なる選挙が、武力紛争に関与した民族主義政党の勝利を導き出してきた結果、現在のボスニアの平和構築は軌道修正を迫られている。民主化に対して、司法改革、汚職対策、犯罪取締、人権擁護などの「法の支配」に関連する全般的な制度構築・能力強化が、主要な戦略的指針として認識されるようになったのである。そうしたボスニアでの情勢に対応したコソボにおける平和構築においても、同様の「法の支配」に対する戦略的位置付けを確認することができる。
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広島平和科学 26
ページ: 215-239
110001044590
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Conflict and Human Security : A Search for New Approaches of Peace-building
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