研究課題
若手研究(A)
1、日本の家計のポートフォリオ保有に関するサーベイデータである、日経RADARを用いて、日本の家計のポートフォリオ選択に関する実証分析を行い、ライフサイクルによる家計の危険資産の保有比率について分析した。欧米諸国に関する先行研究と同じように、危険資産の保有比率は50代前後をピークとした山形を描く。しかし、これは個々の家計における比率の変化ではなく、リスク資産を保有する/しないの意思決定を反映したもので、リスク資産を保有する家計の割合の増減を反映している。さらに本研究では住宅保有の有無が、金融資産ポートフォリオの選択に与える影響を分析し、日本における過大な持ち家への支出、それに伴う借り入れ・頭金制約などによって、株式などのリスク資産の保有を妨げられている可能性を示した。またMitchell教授・Piggott教授との共著論文で、以上の分析に、年金資産と、住宅と住宅ローンから計算した持ち家のネットの資産価値を追加した分析も行った。2、金融資産・人的資本(労働所得)・消費の三者の間の共和分関係(cointegration)を前提とした時系列モデルを、日本のデータを用いて推定した。この関係から発生するいわゆるエラー修正項をリスク・ファクターとして用いて、金融資産のリターンの予測、GDP成長率予測、株式のリターンのクロスセクションのパターンの説明などの分析を行った。この結果、日本においても家計の消費と資産保有の間には長期的に安定的な関係があり、この関係の長期均衡からの乖離が、金融市場・経済全体のリスク要因を説明する重要な変数であることがわかった。またこの分析のフレームワークを用いて、1920年代末-1930年代初頭・1990年代後半のアメリカと、1980年代後半の日本について、資産市場で発生したバブルの状況についての比較分析を行った。
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