研究課題
若手研究(A)
本研究では珪酸塩-金属鉄間の大気形成主要元素の分配実験を行うことによって、これら元素の親鉄性を実証し、地球表層における軽元素組成がいかにして決まったのかを考察した。実験は3段階-(A)高温高圧分配実験(B)走査電子顕微鏡(SEM)と2次イオン質量分析計(SIMS)による試料の微小領域観察(C)ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)による水素・炭素・窒素の定量分析〓からなる。本年度は(B)の内、窒素の定量、および、(C)のガスクロマトグラフ質量分析システムの整備を中心に進め、本研究の仕上げを行った。(B)SIMSによるガラス・金属試料中の窒素分析においては、[窒素濃度]=(定数)x[CN^-]/[C^-]という形で行うのが一般的だが、分析の結果、特に金属中では、同じ試料でも、日によって(細かい分析条件の違いにより)CN^-二次イオンとC^-二次イオンの比がでファクター4以上の範囲でふらつき、定量性に乏しいことがわかった。そこで、以前から手法が確立されているガス元素分析用の質量分析計を用いた定量手法に切り替えた。そこで、多くの試料では、再現性のよい窒素の定量が行えた。結果、3Gpa、酸素活量(logfO2)がIronWustite-2程度の条件で行った実験では窒素の分配係数(金属中濃度/珪酸塩ガラス中濃度)が約40であることがわかった。(C)ガスクロマトグラフ質量分析システムをガス元素分析用の質量分析システムに直結する真空配管を完成させた。その設備を用い、窒素分析の際に同時に生成された炭素(CO_2)の分析を進めた。結果、炭素の分配係数は窒素より有意に低く、10以下であることがわかった。本研究から、少なくとも3Gpa、logfO2=IW-2の条件下では、窒素は炭素よりも親鉄性が強いということが示唆された。本研究の結論は、地球岩石圏・水圏・大気圏におけるN/C比推定値が始原的隕石よりも一桁近く低いことに対する説明を、コアマントル分離の際に窒素・炭素がコアに吸収された際に窒素が選択的に金属相に分配されたことに求める仮説と調和的であることが判明した。
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Nature (印刷中)
Handbook of stable isotope analytical techniques Vol.1
ページ: 361-374
The Astrophysical Journal 600
ページ: 480-484