研究課題
若手研究(A)
本年度は、電界誘起光重合の機構が昨年度に電子の滞在密度がFET構造をとることにより増大することであることがあきらかになったことを踏まえ、光重合を含む有機半導体と光との相互作用についてさらに研究を行った。成果として(1)有機半導体の移動度をtime of flight法で測定することが可能になった。(2)バルクとほぼ同じ結晶構造を持つペンタセンのエピタキシャル膜の作成に成功した。(3)フラーレン誘導体のエピタキシャル成長に成功し、化学合成したフラーレン誘導体で初めて光重合を発見した。ことがあげられる。(1)については、これまで有機半導体の移動度の低さについて、粒界散乱、不純物散乱、分子内フォノン散乱、分子間フォノン散乱など様々な要因が考えられてきた。移動度の温度依存性を測定することが散乱機構の理解には不可欠であるが、粒界や不純物に起因するトラップにより可動キャリヤが減少するため薄膜での低温移動度測定は不可能であった。この点に関し、純度を上げた単結晶・液晶半導体について行われてきた過渡光電流を測定するtime of flight法を薄膜FETに適用することにより、トラップの影響をゲート電界によって除去して低温測定を行うことを試みた。測定系を工夫することによりペンタセンFETについての測定に成功し、低温で移動度が上昇することを薄膜で初めて見出した。すなわち、室温付近で無機物に比べ移動度が低いのは分子間フォノンの寄与によるものであり、弱い分子間力で結合した物質には本質的なものであるものであると考えられる。この結果は、分子設計や物質の選択に役立つと思われる。(2)(3)は、エピタキシャル重合体や単結晶に近い薄膜に対する精密な物性測定を可能にする土台となる。
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