配分額 *注記 |
9,490千円 (直接経費: 7,300千円、間接経費: 2,190千円)
2003年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2002年度: 6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
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研究概要 |
本研究では,(1)基板上に成膜した異方性ナノスケール薄膜のすべての独立な弾性定数を決定する非接触超音波共鳴法を確立し,(2)マイクロメカニックスモデルを応用してその弾性異方性を再現する膜組織の複合材料的評価を行うという2点を目的とした.これが達成されれば,膜構造への理解が深まり,さらに,成膜技術の改善に重要な知見を与えることが期待できる.また,先に挙げたSAWフィルターの設計ように,薄膜の弾性率テンソルが不可欠なアプリケーションも多く,実用的にも意義の深い成果が期待できる.本研究において提案したその基本的な測定原理は,薄膜/基板体の共鳴周波数(固有振動数)を測定して薄膜の弾性率を決定するというものである.様々な振動モードの共鳴周波数を測定することによって,異方性薄膜の独立な弾性定数をすべて決定するのである. 平成15年においては,共鳴周波数から薄膜の弾性定数を全て決定するアルゴリズムを構築した.これはレーリー・リッツ法によって振動変位を多項式近似し,変分原理により未定定数を決定する手法である.膜厚方向には,薄膜と基板の界面においてひずみが不連続になることから,薄膜および基板を多数の層に分割し,一つの層内においては変位は線形的に変化するような基底関数を用いることで,界面におけるひずみの不連続を表現することに成功した.また,数値シミュレーションにより,基板厚さや膜厚の測定誤差などが薄膜の弾性率テンソルの測定結果に与える影響を調べ,実際に得られる弾性率の信頼性を検証した.その結果,膜厚が数%以内の誤差で決定することができれば,得られる弾性定数の誤差も数%以内であることが分かった.確立した計測法を用いてCVDダイヤモンド薄膜の弾性定数測定を行った.その結果,CVDダイヤモンド薄膜には顕著な弾性異方性が存在することが明らかとなった.例えば,薄膜の膜厚方向に関する弾性定数はバルクのダイヤモンドの値に近いが,面内方向の弾性定数はバルクの値よりも10〜20%小さい.この原因を特定するために,マイクロメカニックスと呼ばれる計算モデルを確立した.これによって,柱状の結晶粒の結晶粒界において不完全結合が存在することが示唆され,この不完全結合を考慮することによって測定結果を説明することができた.
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