研究課題
若手研究(A)
定常運転核融合炉における周辺粒子制御への応用を目指し、超透過現象を利用したメンブレンポンプの開発が進められている。超透過は、透過膜入射側表面が酸素等の非金属不純物で覆われており、水素同位体の再結合放出が抑制されている場合に発現する。従って、スパッタリング環境下で透過性能を維持するためには、バルク中へ不純物を溶解し連続的に表面偏析させる必要がある。昨年度までに、超透過膜候補材である5族金属の中でも比較的表面状態の制御が容易なNbについて、酸素が支配的な表面偏析元素であることを確認すると共に、水素同位体の表面再結合を酸素が抑制する機構、水素イオンによる偏析酸素のスパッタ率などを調べた。本年度は、中性子照射による誘導放射能が低いという実用上好ましい特性を有するVについて、その特性を評価した。まず、本研究経費で整備したプラズマ駆動透過実験装置に厚さ0.1mmのV膜を取り付け、バイアス電圧0〜250V、入射イオン流束0.6〜1.2×10^<19>m^2s^<-1>、膜温度703〜823Kでプラズマ駆動実験を行った。表面不純物がスパッタされるような高いバイアス電圧を印加しても透過速度は減少せず、連続的な不純物の表面偏析により、スパッタ環境下でも超透過が維持されることが確認された。上述のように、Nbの場合には酸素が支配的な表面偏析元素であり、バルク中の酸素濃度と水素同位体の表面反応速度との間に明確な相関が見られた。一方、V表面での水素同位体反応速度は、バルク中の酸素濃度のみならず熱処理条件にも敏感に依存し、複雑な変化を示した。表面分析の結果から、この複雑な変化は硫黄の影響によるものであることが示唆された。また、炭素をプラズマ対向材料として使用する炉では、透過膜表面に炭素が堆積し、炭化物層が形成される可能性がある。そこで予備的実験を行い、V炭化物層が水素透過能を有することを確認した。
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Physica Scripta T108
ページ: 14-18
Annual Report of Hydrogen Isotope Research Center, Toyama University (印刷中)
110004722924