配分額 *注記 |
28,990千円 (直接経費: 22,300千円、間接経費: 6,690千円)
2004年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2003年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2002年度: 21,190千円 (直接経費: 16,300千円、間接経費: 4,890千円)
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研究概要 |
我々はこれまで含窒素ヘテロ環カルベン(NHC)の配位子としての機能に興味を持ち研究を展開し,NHCが様々な反応においてホスフィン配位子とは異なる反応性や立体選択性を示すことを見い出してきた.その中の一つに,ニッケル触媒によって進行する1,3-ジエンとアルデヒドとの分子間カップリング反応が挙げられる.この反応ではトリアルキルシラン存在下,配位子としてPPh_3を用いると立体選択的E-オレフィンをもつカップリング体が生成するが,NHC配位子を用いると反応はZ-選択的に進行し,Z-オレフィンをもつカップリング体が生成する.ところで光学活性NHC配位子を用いた「触媒的不斉合成」に関する研究例は極めて少なく,大変興味が持たれる.そこで本研究課題では,光学活性NHC配位子を用いた上記の反応の不斉反応への展開を検討した.Et_3SiH存在下,20mol%のNi(cod)_2に対し,配位子として1,3-bis[(1S)-phenylethyl]imidazoyl-2-ylideneを用い反応を行ったところ,反応はZ-選択的に進行した.また,この時カップリング体の鏡像異性体過剰率は28%eeを示した.一方,このNHC配位子と共通の不斉環境を有していると考えられる還元型の1,3-bis[(1S)-phenylethyl]-4,5-dihydroimidazoyl-2-ylideneを用い反応を行ったところ,Z-選択性は大きく低下した.これらの反応の錯体調製時には,imidazolium塩またはimidazolinium塩を前駆体として用い,対応するカルベンを調製している.従って,還元型NHCの場合はimidazolinium塩の酸性度が低いため,系内で十分にカルベンが発生せずZ-選択性の低下を招いたと考えられた.そこで錯体調製条件を種々検討したところ,imidazolinium塩から調製した還元型NHCにおいてもZ-選択的なカップリング反応を実現することが出来た.今後更に,新たな光学活性NHCの創製により鏡像異性体過剰率の向上を目指すと共に,他の反応への応用を展開したい.
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