研究課題
若手研究(A)
本研究では、ヒトの足の動きの特徴とその進化的意義を調べること目的とし、樹上性と地上性の霊長類の足について、歩行中の動きを運動学的および解剖学的手法を用いて調べた。運動学的解析は、樹上を模した支持体上と地上の両方で行い、歩行時の足の動き(kinematics)、足圧、反力などを分析した。被験体には、樹上性のテナガザルとクモザル、半地上性のニホンザルを用いた。その結果、地上歩行では、樹上性2種の足がニホンザルの足に比べ、立脚後期により外側に向いており、蹴り出しの機能軸が第2指よりにあること等が明らかになった。これらが樹上適応であることは、地上性のニホンザルにおいても、樹上で歩く時にはこれらの特徴をある程度示したことから明らかである。樹上性の種は、樹上歩行の際に上記の特徴をさらに促進させた。足圧分布計測からは、二足歩行時には四足時に比べ、立脚後期に第2、3中足骨頭に大きな圧力がかかること、母指にかがる圧のピークが立脚期後平に移ることなどが明らかになった。二足で歩くことにより、母指を他の指に揃え、立脚期後半の蹴り出しに用いるという戦略が、ヒトほど極端ではないにせよ取られたのかもしれない。高度に二足訓練を行ったニホンザルでは上記の特徴がさらに促進され、母指の外転角も小さくなった。また、踵にかかる圧も増加した。つまり、ヒト歩行の特徴に似た特徴を示した。解剖学的解析は、類人猿2種を含む4種の真猿の足底筋について肉眼解剖の手法で行った。その結果、系統的にヒトに近づくにつれ、背側骨間筋の配置が第3指まわりから第2指まわりへと変わることが判明し、足の機能軸が第2指へ移るという運動学的解析を裏付けた。これらの研究成果から、ヒト歩行時の足の動きの特徴のうち、足の「あおり」や機能軸の第2指への移動は樹上適応の名残であり、ヒールストライクや母指の役割増加は地上歩行を続けた結果であることが示唆された。
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Human Origins and Environmental Backgrounds(論文集,Kluwer Academic/Prenum Publishers, New York) (In press)
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