配分額 *注記 |
28,730千円 (直接経費: 22,100千円、間接経費: 6,630千円)
2003年度: 9,100千円 (直接経費: 7,000千円、間接経費: 2,100千円)
2002年度: 19,630千円 (直接経費: 15,100千円、間接経費: 4,530千円)
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研究概要 |
ヘリコバクター・ピロリは、ヒトにおいて胃粘膜に持続感染を引き起こす病原細菌である。本菌による感染が慢性消化性潰瘍や胃粘膜上皮過形成あるいはそれに起因するMALTリンパ腫等の発癌に深く関係すること示唆されているが、その粘膜感染機構は今だわかっていない。 ヘリコバクター・ピロリのcag pathogenicity isiand(cag PAI)とよばれる遺伝子群は、IV型分泌装置と呼ばれる特殊な分泌機構を保持していると考えられており、この装置によって、ピロリ菌の病原性タンパク質CagAと、NF-κB活性化を促進させる未知の物質が付着した宿主細胞に分泌されると考えられている。 この分泌装置の構造を解析するために、IV型分泌装置の解析が進んでいるAgrobacterium tumefaciensの分泌装置構成成分と相同性の高いcag PAI上のHP0532(VirB7),HP0528(VirB9),HP0527(VirB10),HP0525<VirB11),HP0524(VirD4)に着目して、ピロリ菌26695株の各遺伝子破壊変異株を作製した。作製した破壊株を胃癌細包株AGS細胞に感染させて、各株によるCagAの宿主細胞移行能とIL-8産生能を検討した結果、HP0524はCagAの宿主移行のみに関与する因子であるが、HP0532,HP0528,HP0527,HP0525の遺伝子産物はCagAの宿主移行とIL-8産生能の両方に関与することが明らかになり、これらの因子が分泌装置の構造形成に関与する可能性が考えられた。そこで次に、各遺伝子産物に特異的なポリクローナル抗体を作製して、それぞれの構成成分の菌体における局在を、蛍光免疫顕微鏡を用いて観察した結果、HP0532は菌体表面に存在することが示唆された。また、各種抗体を用いた免疫電子顕微鏡観察から、ピロリ菌のIV型分泌装置は、赤痢菌やサルモネラ菌の菌体表面に存在するIII型分泌装置にみられる注射針のような構造とは大きく異なり、不定形の突起物であることが示唆された。 以上の結果から、ピロリ菌の病原性に深く関与するIV型分泌装置の超分子的構造の概要が初めて明らかになった。
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