研究課題
若手研究(A)
8週齢の雄Wistarラットの大動脈分岐部直上を血管クリップでクランプし、これをはずすことで膀胱の虚血-再灌流モデルを作製した。ラット膀胱の虚血時間を30分とし、様々な再潅流時間で膀胱を摘出した。この膀胱を用いて、恒温槽を用いた機能実験(カルバコール、KC1に対する反応)および、H&E染色、TUNEL染色を行った。一酸化窒素合成酵素(NOS)阻害剤の作用を調べるため、L-NAME30mg/kgを虚血30分前に腹腔内投与する群を作成し、同様の実験を行った。各群の摘出した膀胱頂部の筋切片を作成し、恒温槽を用いてカルバコールに対する反応を調べた。機能実験では虚血時間を30分に設定すると再灌流30分にてその傷害は増強されたが、この障害はL-NAMEで予防できた。再灌流3日で膀胱収縮力は改善し、7日後は膀胱平滑筋の障害は再灌流30分に比べ優位に回復したがNO合成阻害剤の投与のよりコントロールのレベルまで回復した。TUNEL陽性細胞は虚血-再潅流3日後にもっとも多く観察された。このアポトーシスの誘導は、L-NAMEにて阻害された。ラット膀胱、前立腺の虚血時間を30分、再潅流時間を0、30、60分、1日、7週間とし、それぞれの時間で膀胱、前立腺を摘出した。虚血時間30分、再潅流時間60分の群の作成時にレーザードップラー血流計を用いて前立腺の血流を測定した。各群の摘出した膀胱、前立腺のHSP70-1/-2mRNAの発現をリアルタイムPCR法を用いて定量した。また、HSP70の蛋白レベルでの発現をELISA法で定量した。ラット膀胱、前立腺の血流量は虚血をかけると約10%まで低下したが、再還流でほぼコントロールのレベルまで戻った。HSP70-1/-2のmRNAの発現は、それぞれ虚血時より有意に増加し再還流60分まで高値をとった。またHSP70の蛋白レベルでの発現は、mRNAの発現に少し遅れて増加した。再還流30,60分後に有意に上昇した。本実験からHSP70の発現は、膀胱、前立腺の虚血-再還流障害より遅れて上昇するが、比較的早期にコントロールレベルに戻ることが示唆された。
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