研究課題
若手研究(A)
これまでに多くの細胞内蛋白質がユビキチン-プロテアソーム経路で代謝調節されることが明らかにされてきた。プロテアソームは総数50種以上のサブユニット群から構成された巨大な多成分複合体であり、主としてユビキチン化された標的蛋白質を選択的に分解するATP依存性プロテアーゼであるが、ポリユビキチン化された蛋白質が26Sプロテアソームにより認識される過程にどのような機構が存在しているかは現在まで明らかではない。本研究で我々はプロテアソームの基質識別サブユニットのひとつが、2型ユビキチン様蛋白質Scytheを介してプロテアソーム本体とシャペロン依存性ユビキチンリガーゼXchipとを結びつけるアダプター的役割を果たしていることを突き止めた。Scytheは種々のシャペロンと相互作用することが知られている抗アポトーシス蛋白質であるが、ユビキチン-プロテアソーム系との相互作用を不能にしたScythe蛋白質の発現は、細胞死の調節経路に重大な影響を与えることを我々は見出しつつある。すなわち我々は、Rpn10cとの結合に関与するScytheのN末端領域を解析し、それがタンデムに並ぶ連結した4つのユビキチン様ドメインからなり、少なくとも2つのドメインの存在がRpn10cとの結合に必要であることを明らかにした。現在、アポトーシス・発生など高等多細胞生物における高次機能に、シャペロン-プロテアソームシステムがどのように関与しているかについて研究を進めている。さらに本研究で我々は、線虫C.elegansを用いた解析から、ユビキチンレセプターサブユニットの一つがC.elegansの生殖系列の形成に必須であることを見い出した。例えば、我々はC.elegansのユビキチンレセプターサブユニットRpn10変異と合成効果を示す遺伝子としてユビキチン鎖伸長因子E4(UFD2)を見い出し、このRpn10-UFD2二重変異の親株は正常に生存できるが、生殖系列の減数分裂過程に異常を生じ不稔の表現型を示す。これらの研究を通して、ユビキチン経路の基質認識を基礎にした代謝的安定性の新しい制御機構を明らかにして細胞周期研究に新しい領域を開拓することを最終目標に研究を進めている。
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