研究課題
若手研究(A)
本年は、本研究の最終年度であり、いくつかの具体的成果を上げることに成功した。全て、本研究で開発した磁気ピンセットを用いた研究である。まず、ADP阻害状態のF1モーターの回転子を、機械的に押すことによって活性化する現象の解明に成功した。これによって、F1モーターのADPに対する親和性が回転方向に沿って減少することを明らかにすることができた。この性質は、F1のモーターとしての性質を説明するだけでなく、逆反応であるATP合成をもうまく説明できる。すなわち、F1はモーターとして機能するときは、効率的にADPを解離しなくてはいけない。一方、合成酵素として機能するときは、溶液中から効率的にADPを結合しなくてはいけない。この二つの相反する性質は、本研究で明らかになったようにADPに対する親和性に強い角度依存性で説明がつく。また、1分子操作とマイクロ加工技術を組み合わせた実験によって、1分子のF1を逆回転させたときのATP合成効率の測定にも成功した。超微小の溶液空間にF1を閉じ込めて逆回転させることで、F1が合成したATP分子を濃縮することができる。合成されたATP量は、F1モーター自身の回転速度から見積もることができたい。この結果、εと呼ばれるこれまでさほど重要視されていなかったサブユニットが効率的な合成反応に重要であることが示された。
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Nature 433
ページ: 773-777
Proc.Natl.Acad.Scie. 102・12
ページ: 4288-4293