研究課題
若手研究(A)
前年度は細胞死誘導型Bcl-2ファミリーメンバーのBaxに焦点を当ててJNKの機能を調べたが、本年度はBH3 onlyサブタイプの細胞死誘導型Bcl-2ファミリーメンバーのBadに注目してJNKの機能を検討した.Badはこれまでに、神経栄養因子等の生存促進シグナル存在下で活性化するAktにより直接にリン酸化を受け、このリン酸化依存的に14-3-3タンパク質に結合することで不活性化する事が知られている.我々は細胞死シグナルによって活性化したJNKが14-3-3のSer185をリン酸化することを見いだしたので、このリン酸化によって14-3-3とBadの結合に影響が及ぼされるかを検討した.活性型JNKを細胞に発現した場合、あるいはJNKの活性化するストレス刺激(アニソマイシンなど)を加えた場合に、14-3-3とBadの結合が低下する事が免疫共沈法によって明らかになった.また精製した14-3-3とBadのリコンビナントタンパク質を用いた再構成実験においても14-3-3のJNKによるSer185のリン酸化によって、Aktによりリン酸化を受けているBadの結合が低下する事が示された.さらにJNK経路が活性化すると細胞内でのBadの局在が細胞質からミトコンドリアへと移行する事も明らかになった.ミトコンドリアの上流において生存シグナルと死シグナルが拮抗するメカニズムは、ほ乳類細胞の生死決定機構を理解する上で非常に重要である.本研究において、Aktを介した生存シグナルとJNKを介した死シグナルが14-3-3に収束し、拮抗的に働くことが示された。Aktによってリン酸化される事で14-3-3に結合する細胞死誘導タンパク質はBadにとどまらず、神経死に関与するAsk1など数多くの分子が知られている.従って本研究で明らかになった拮抗メカニズムは、これらの分子に共通に当てはまる一般的な機構である可能性があると考えている.
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