当該の研究補助金を活用していくつかの研究活動を行った。2001年末に神戸にて辛亥革命90周年シンポジウムが行われ、私は通訳として参加した。数日にわたり、政治、経済、思想、華僑等、多分野に及ぶ大規模な研究集会であったが、私は全日程を傍聴した。その総括が、野澤豊氏の編集による『近きに在りて』掲載の拙文である。単なる紹介にとどまらず、自分なりの論評も加えている。というのは、同シンポジウムでは辛亥革命研究の新たな傾向や研究史上の意義も私なりに見て取れるからである。2002年5月にはハーバード大学研究員の孔祥吉氏との学術交流が意義深い。孔氏は档案史料を駆使した戊戌変法史研究の世界的な権威。89年の天安門事件を機に中国人民大学清史研究所教授の職を辞し渡米し、生活の拠点をアメリカに移している。今回、東京大学の村田雄二郎助教授の招きで初来日を果たし、3ヶ月日本に滞在し、東京での外交史資料館での史料調査のかたわら、各地で数々の講演、学術交流を行った。私は関西地区、京都大学人文科学研究所等での講演旅行に数日間にわたり同行し、通訳をするとともに、孔氏と公私にわたる学術交流を行った。その一端、および孔氏の学術の簡単な紹介は『現代中国研究』誌に掲載された拙文で披瀝した。孔氏の学問、研究がどの程度、日本人学者に理解されているかどうかは、はなはだ疑問で、拙文は意味あるものであったと自負している。なお孔祥吉氏は2003年4月より1年間、東京大学客員教授に就任、日本滞在の予定。引き続き有意義な学術交流を行いたい。また史学会(東京大学)の依頼により、松本英紀『宋教仁の研究』の新刊紹介を行った。堅実な伝記研究である同書はこれまできちんとした紹介がなされてこなかった。本補助金により、香港での史料調査(香港電影資料館等)を行い、1949年に香港で製作、上映された映画『清宮秘史』の貴重な資料を収集した。その成果は近日中にまとめる予定である。
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