研究課題/領域番号 |
14710028
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研究種目 |
若手研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
美術史
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
馬渕 美帆 東大, 人文社会系研究科, 助手 (60323557)
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研究期間 (年度) |
2002 – 2003
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研究課題ステータス |
完了 (2003年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
2003年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
2002年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
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キーワード | 桃山時代狩野派 / 狩野永徳 / 狩野松栄 / 狩野宗秀 / 洛中洛外図 / 風俗画 / 円山応挙 / 難福図巻 |
研究概要 |
今年度は、実地調査に基づいて、初期洛中洛外図屏風として重要な作品であるにもかかわらず、従来筆者や制作年代が未確定だった、歴博乙本<洛中洛外図>の筆者と制作年代を確定する研究を中心に行った。初期洛中洛外図屏風の内、歴博乙本のみに特徴的な描法を選び出し、それらを狩野派の基礎を築いた狩野元信・1560年代から1590年頃の時期に活動していた狩野松栄・永徳・宗秀の各工房による、小画面のものを含む現存するすべての洛中洛外図と比較検討した。その過程で、元信・松栄・永徳・宗秀の、洛中洛外図を中心とする具体的な作品研究を行い、それぞれの描法の特徴を抽出した。そして、歴博乙本に特徴的な描法が、各工房による洛中洛外図の内、宗秀の洛中洛外図にのみ顕著に共通するものであることを示した上で、それらの描法の歴史的な位置付けを考察し、それらの描法が元信・松栄・永徳にはいまだなく、宗秀世代の登場と共に初めて明確に現れたものであることを明らかにし、これが作品の編年に用い得る指標であることを指摘した。また、松栄工房から宗秀工房への絵師の移動があった可能性を示し、両工房で粉本に強く依拠して再生産するという洛中洛外図の制作姿勢が共通することも指摘し、桃山時代狩野派の各絵師及びその工房の活動内容と、彼ら同士の関係の一端を明らかにした。結論として、歴博乙本は、松栄工房で画法を学んだ後、宗秀工房の初期からその中で活動した絵師により、1570年代半ば前後から後半頃までの間に制作されたちのと確定した。以上の研究は、「歴博乙本<洛中洛外図>の筆者・制作年代再考」と題し、2003年1月に美術史学会東支部例会で口頭発表を行った。また、今年度の調査研究を行う中で、狩野派の風俗画とも密接な関わりを持つ、江戸時代の円山応挙筆<難福図巻>が『観音経』の内容やそれらを絵画化した絵を参照して構想されたことを新たに発見し、論文にまとめた。
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