研究課題/領域番号 |
14710029
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
美術史
|
研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
藤原 貞朗 茨城大学, 人文学部, 助教授 (50324728)
|
研究期間 (年度) |
2002 – 2003
|
研究課題ステータス |
完了 (2003年度)
|
配分額 *注記 |
2,400千円 (直接経費: 2,400千円)
2003年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2002年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
|
キーワード | アンコール遺跡 / アンコール考古学 / フランス植民地政策 / フランス極東学院 / 文化遺産 / 文化行政 / 考古学史 / 植民地学 / インドシナ考古学 |
研究概要 |
20世紀、フランスはカンボジアのアンコール遺跡の考古学調査・研究を牽引し、遺跡保存から美術史的編年の確定に至るまで、多大な学術的貢献を果たしてきた。その貢献を過小評価できないが、しかし、植民地下で独占的に行われた活動の政治性もまた看過しえない。1893年に旧インドシナを支配下に治め、世界第二の植民地保有国として、政治・軍事・経済の各方面で国際的威信を得たフランスによるアンコール考古学は、フランスの極東支配の意思を象徴的に示すものともなっているからである。本研究は、1997年まで政治的理由かち非公開だった古文書を調査することによって、学問的貢献と政治との危うい関係を歴史的事実として明らかにした。主な調査機関は、フランス極東学院、ギメ美術館、国立図書館、国立古文書館である。収集資料をもとに特筆した出来事は、1870-1940年の間にパリの各美術館に移送された古美術品の来歴とその経緯、1923-1945年にハノイのフランス極東学院によって行われた「カンボジア古美術品販売」、1931年の国際植民地博覧会における学術機関の活動、1943年に日本との間に行われた「古美術品交換」である。こうした事例が示すのは、考古学の理念が「過去への蘇生」を代償として現在の破壊」を生み出す可能性のあること、つまり、カンボジア現地の遺跡の多大な損失を代償とせずには、考古学の成熟とその国際的成功もあり得なかったという事実である。学問的貢献を称揚するあまり、その政治性を不問にしてはならないのはいうまでもないが、しかし、政治的問題を理由に学問的貢献を否定してしまっては、現在の学問そのものもありえなかったという事実を秘匿することになる。求められるのは、植民地学としての近代的な学と政治とが取り結んできた関係を歴史的に整理し、その生成および発展過程を見極めた上で、両者の関係を批判的に修正する倫理を確立することである。
|