研究概要 |
日本語話者による英語単語のリスニング過程について,単語の分節化の観点から検討を行なった。英語話者を対象とした研究では,語中のストレスが単語分節化の手がかりとして使われていることが示されている。これを受けて本年度は,日本語話者が英単語のストレスを分節化の手がかりとして利用しているかを反応時間を指標とした実験により検討した。Strong-Strong型の韻律構造をもつ無意味語とStrong-Weak型の構造をもつ無意味語を刺激に,被験者に直前に提示された単音節英単語がその中に含まれているかを判断させた。その結果,英語リスニングに熟達していない被験者では,判断の時間に韻律構造の違いによる効果が認められなかった。被験者数が十分ではないため,明確に結論づけることはできないが,この結果から日本人の英語非熟達者がストレスを分節化の手がかりとして使用できていないことが示唆された。 また本年度は,英語音声単語の処理に関する検討の基礎となるデータを得るために,日本語単語のリスニングに,その韻律特徴(アクセント型)がどのように使われるかを検討した。音声提示単語の処理においては,音素的に類似した単語が多い単語の方が,それらの間で干渉が生じるため,少ない単語に比べ認知に時間がかかることが知られている。本研究では,(1)韻律的に同じ音素類似語を多くもつ単語,(2)音素的には似ているが韻律的には異なる語を多くもつ単語,(3)音素的に類似した語の少ない単語の3つで,認識にかかる時間を比較した。その結果,認識時間は(1)>(2)>(3)の順で長くなった。この結果から,語彙レベルの韻律特徴が,語彙アクセスの弱い制約となっているという,昨年度の知見が確認された。この成果は,XXVIII International Congress of Psychologyにて発表された。 その他,単語の音韻処理の脳内機構に関する研究について,総説を発表した。
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