研究概要 |
今年度は,過去2ヵ年に渡る研究の成果を土台として,大学生における抑うつの予防を目指した心理教育のプログラムを作成,それを授業中に実施し,その効果を検討した。すなわち,年度前半では,都内の一大学における授業において授業内容とリンクさせる形で「自己に対する態度」をテーマとして取り上げ,自己への態度の変容と抑うつの予防についての心理教育を行い,質問紙により効果を調べた(受講者数26名)。申請者は当該大学でもう一つの授業を担当しており,これを統制群とし,心理教育の効果を見るための質問紙を実施した。年度後半は,これらの授業で得られたデータを分析することにより,心理教育の効果について実証的に検討した。なお,授業の実施に際しては,受講者数が研究計画当初の予定より多かったため,臨床心理士の資格をもつ他大学の院生の補助を得た。 受講者の質問紙への回答を分析した結果,心理教育授業について内容のわかりやすさが確認された。また,気分が落ち込みそうになったときに自分で対処できるか(効力感)について検討したところ,複数の授業において効力感が授業の前後で有意な改善していた。対象者にとって今回の心理教育の授業はよく理解され,ネガティブな思考や情動を制御する自信が概ね増加したことが示唆される。同様の結果は,統制群との比較においても確認された。なお,結果については平成17年度の日本心理学会,日本心理臨床学会などで発表する予定である。 今回の心理教育の授業は,当初の目的は概ね達成できたと言えよう。しかし,授業のわかりやすさを増すためにさらなる工夫が求められる。受講者の感想を分析し,工夫を積み重ねて,今後とも継続して成果を検討していく必要がある。
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