研究概要 |
平成14年度では,ビデオ映像とVRエクスポージャーで用いられるインタラクティブCGの臨場感に差がないことが明らかになり,ビデオ映像を用いる簡易型VRエクスポージャーの妥当性が示された. 平成15年度では,簡易型VRエクスポージャーによる飛行恐怖症の改善を目的とした治療実験を行った.参加者は飛行恐怖傾向が高い大学生2名であり,ベースライン期におけるFlight Anxiety Questionnaire(FAS)の平均値は,それぞれ69.7と82.7であった.被験者間多層ベースラインデザインを採用した6日間連続のエクスポージャーセッションを行った.1日のエクスポージャーセッションでは,およそ20分間のエクスポージャーを休憩をはさんで3回実施した.空港内の様子,旅客機への搭乗シーン,機内から撮影した離着陸や飛行中の様子などの飛行機に関連した様々なシーンを収録したビデオテープの中から,それぞれの参加者が恐れているシーンを抽出し,およそ20分間の一連のシナリオとなるように編集して恐怖刺激を作製した.ビデオテープの映像は頭部搭載型ディスプレイ(FMD-250W,オリンパス)へ呈示した.また,音声はスピーカーとボディソニック装置を内蔵したリクライニングシート(MC-350,BSオメガ)へ出力することで音声刺激と振動刺激を呈示した.この簡易型VRエクスポージャーは,従来のVRエクスポージャーに比べて,非常に簡便かつ安価にエクスポージャーを実施可能とするものである。実験の結果,1名は飛行機に対する態度(Attitude Toward Flying Questionnaireを基に改変し作製)が顕著に改善された.また,他の1名は,FASおよびFlight Anxiety Modality Questionnaireで測定した飛行恐怖傾向が顕著に低減し,また飛行機に対する態度も改善された.両名とも1週間後のフォローアップ期にも改善が維持されていた.以上のことから,簡易型VRエクスポージャーが飛行恐怖の低減に有効であることが示唆された.
|