研究課題/領域番号 |
14710125
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研究種目 |
若手研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
社会学(含社会福祉関係)
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
伊藤 智樹 富山大学, 人文学部, 助教授 (80312924)
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研究期間 (年度) |
2002 – 2004
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研究課題ステータス |
完了 (2004年度)
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配分額 *注記 |
1,600千円 (直接経費: 1,600千円)
2004年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
2003年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
2002年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
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キーワード | セルフヘルプ・グループ / 吃音 / 物語 / 自己 / 自己物語 |
研究概要 |
本研究は、吃音者によるセルフヘルプ・グループにおける参加者の自己変容を、人々の自己物語から分析した。リサーチ・クェスチョンは、(1)セルフヘルプ・グループで人々が語る物語において、苦境から前進的な筋へと転じさせるパターンはどのようなものがあるのか、(2)参加者個人は参加の過程の中でどのようにして物語を変化させるのか、という2点に絞られた。 (1)集会への参加調査による事例収集と、それらの解釈的な分類の結果、(A)症状の改善(例;治ってきた。治ると信じている。)、(B)相互行為上での吃音の開示(例;どもりながらも話した。自分がどもりだと打ち明けた。)(C)吃音者の重要性を下げる経験(例;仕事で自信をつけた。自分が気にするほど他人は気にしていないと気づいた。等)(D)セルフヘルプ・グループとの出会い、の4つを抽出できる。このうち(A)は、A.フランクが近代社会において支配的とする「回復の物語(restitution narrative)」と共通性があるが、細かく分析してみると、「回復」イメージの描かれ方と信憑のされ方に微妙なずれを観察することができる。この点で、吃音者たちの自己物語からは、近代以降の社会で支配的な物語には一致しきれない生き難さが発露している。 (2)申請者の調査開始以降に調査対象であるグループに新しく参加してきたひとりのメンバーについて、集会での物語の変化を継時的に追った。その結果、物語の変化は「回復の物語」からの乖離として解釈できる。ただし、このような変化の解釈が基本的には成り立つ一方で、変化しきれない「ためらい」の声をデータから拾い上げることもでき、セルフヘルプ・グループを「回復の物語」のオルタナティヴを手に入れる場として簡単に記述してしまうことの危険性も伺える。 上記の発見については、2004年11月の日本社会学会において報告され、2005年3月現在、投稿準備に入っている。
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