研究課題
若手研究(B)
精神障害当事者自身がサービス提供者として活動することの限界と可能性について検討することを目的に、ホームヘルプサービスに焦点を当てて、利用者の立場からみた評価を行った。精神障害者ピア・ホームヘルパー養成事業を行った自治体と協力体制をとり、精神障害者ホームヘルプサービスの全利用者903人を対象に質問紙調査を実施した。質問紙の回収率は502人(57.8%)だった。サービス全般に対する評価、ピア・ヘルパー(以下、「ピアHr」)に対する認知状況や利用希望を把握した。その結果、サービス全般は満足だが、5割の人でヘルパーの交代に苦労していること、話相手への希望が5割と高く、安心できる人間関係がサービスに必要とされることが示唆された。「ピアHr」の認知度は、「ピアHr」の利用者が56人(11%)、「知っている(利用中も含む)」が21%、「聞いたことはあるが詳しく知らない」が13%で、十分な認知を得てはいないことがわかった。「ピアHr」の利用者は、8割が「ピアHr」の利用の継続を希望し、「わからない」は8人(14%)、「やめたい」は0人と概ねよい評価だった。非利用者のうち、「ピアHr」の利用希望者が14%、「利用したいと思わない」が25%、「わからない」が42%だった。希望する理由には、病気や障害の理解が得られる安心感、「ピアHr」の姿を通して就労、回復者のモデルが得られることがあげられた。「ピアHr」を利用しない理由は、「ピアHr」の資質や業務遂行能力に対する不安、障害者同士でのマイナス面や健常者との関わりへの期待、「ピアHr」のことをよく知らない、などがあげられた。ホームヘルプサービスには、話をよく聞き、理解してくれる支援者が求められ、「ピアHr」の長所が活かされる可能性がある。しかし、利用者は業務遂行能力への不安があり、ピアが活躍できる場を支えるために、十分な教育支援体制も必要とされる。