研究概要 |
これまでに行ってきたイギリスにおける特別な教育的ニーズ論研究の各論として,日本においても注目されている特別な教育的ニーズ・コーディネーター(SENCO)の機能と養成に関する研究を行った。まず,特別な教育的ニーズ・コーディネーター制度がイギリスの教育制度の特質との関連でどのように規定されるのかを明らかにした。また,継続的に特別な教育的ニーズ・コーディネーターや同僚教師への面接調査と質問紙調査,イギリスの特別な教育的ニーズ論研究者への面接調査を実施し,制度構造と実践との関係性を明確にしながら研究を進めた。その結果,特別な教育的ニーズ・コーディネーターの機能は,イギリスにおける特別な教育的ニーズに関する教育制度の特徴である1)判定書の存在,2)コード・オブ・プラクティスによって地方教育当局(LEA)と各学校の責任が明示されていること,3)各学校に特別な教育的ニーズへの対応方針の明確化が義務づけられていること,4)特別な教育的ニーズが「障害」以外の要因も含めていること,5)特定の子どもを抽出して対応するばかりでなく学校全体でニーズへの対応を高める方向性が存在すること,6)ティーチング・アシスタントなどの補助職員が各学校の状況に応じて雇用されていること,7)様々な専門家からなる年次レビューが適切に機能していることなどの条件の下で成立していることを明らかにした。さらに研究成果を日本の特別支援教育に応用するために,特別な教育的ニーズ・コーディネーターの養成のための教材を作成した。さらに,特別支援教育コーディネーターの養成講座等における受講生の意識調査を実施して,日本においてコーディネーター制度を展開するための手がかりを得始めた。研究成果は,著書2冊(単著1冊,分担1冊),論文4編,学会発表2編,学会発表予定1編,その他県教委や教育実践関係雑誌への寄稿3編として公にした。(このうち平成16年度分の研究成果は,著書(分担)1冊,論文2編,学会発表予定1編)
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