本年度は、ドイツにおける「持続可能な開発のための教育」に関するこれまでの研究を踏まえ、日本の教育現場で実践してゆくための基礎研究を行った。 「持続可能な開発のための教育」においては、「将来世代への責任」をその目標の一つに掲げることが要請されている。そこで、これを基礎づける環境倫理学的研究を行った。研究の成果は、論文(「環境教育の基礎概念としての「未来世代への責任」-ハンス・ヨナスの未来倫理の検討-」(島根大学教育学部紀要・第38巻))にまとめた。その概要は次の通り。 ・概要:環境教育の基礎概念として「未来世代への責任」を基礎づけるという関心から、通時的責任性を環境倫理的問題として指摘したH.ヨナスの未来倫理を検討した。ヨナスの未来倫理は、彼の目的論的自然観を背景とし、人類の(未来における)生存の有価値性に関する形而上学的命題に規定されるものであることを確認した。しかし、彼の構想はカント以前の独断論であり普遍妥当性を要求しえないことから、他者性・共同性の観点からの補完が必要であることを指摘した。
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