研究概要 |
保育者養成あるいは初任期にあたる青年期後期は,アイデンティティ(自我同一性)獲得という発達上の大きな課題に直面する時期でもある。流動的かつ不安定な社会の中にあって子どもの養護・教育にあたるこれからの保育者には,専門的知識・技能の修得のみならず,「保育者自身の自我の成長・発達」,「人間的成長」を志向した養成・研修が不可欠と考える。このような観点から,(1)志望学生及び現職者の職業意識とアイデンティティとの関連の検討:養成期から初任期にかけての「保育職業意識の発達」と「アイデンティティ形成」との関係を明らかにする。(2)保育者のアイデンティティやその他の心理的要因を捉える具体的な方法の提案:評価・測定法を提案し,アイデンティティに関連する諸要因の関係を明らかにすることを本研究の目的とした。さらにこれらを踏まえて,志望学生及び現職者のアイデンティティ形成・変容過程を検討し,包括的なモデルや養成のあり方を提案することを目指すものである。 本研究の目的に即して本年度は,調査を依頼している養成校を中心に継続してデータを収集するとともに分析を進め,その一部を学会誌に投稿した。具体的には,保育者志望学生らを中心に質問紙調査を実施し,保育職業意識,保育者効力感,アイデンティティ地位,アイデンティティ形成状態の程度,自我態度等の基礎的データを収集し,分析を進めた。また,現職保育者に対して郵送による質問紙調査を実施し,保育者のアイデンティティと職業意識保育者効力感等との深い関連を確認することができた。さらに,アイデンティティとその他の心理的側面を捉えるための具体的な尺度構成について作業を進めた。これらと並行して内外の関連文献の収集・整理を研究補助員の協力のもと進めるとともに,専門性の高い研究者,保育者から指導助言を受けることもできた。また,保育者の自我成長と保育内容の指導力量との関係など,今後の発展的研究に向けて,具体的な方向性や課題を明確にすることができた。
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