研究課題/領域番号 |
14720017
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研究種目 |
若手研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
公法学
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
北村 和生 立命館大学, 法学部, 教授 (00268129)
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研究期間 (年度) |
2002 – 2004
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研究課題ステータス |
完了 (2004年度)
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配分額 *注記 |
1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
2004年度: 400千円 (直接経費: 400千円)
2003年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
2002年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 行政法 / 国家賠償法 / フランス公法 / 環境法 / 予防原則 / フランス法 / 不作為責任 |
研究概要 |
過去2年間は、最近のフランスの行政裁判所判例および学説の整理を中心に研究を行ってきた。たとえば、化学工場などの特定施設の規制の不作為やアスベスト規制の遅滞に関する国家賠償請求訴訟の諸判例がその柱であった。 本年度は、これまでの研究に基づいて、フランス行政判例が、行政の規制権限行使の作為義務として、何を根拠としているかを中心に研究を行った。この点について、近時のフランス法で顕著なのは、いわゆる予防原則であり、予防原則は、広い意味での環境破壊に関する国家賠償請求訴訟について、行政の損害賠償責任を根拠づける作為義務を導出するために援用されている。たとえば、2004年3月3日の4つのコンセイユデタ(行政裁判所における最高裁にあたる)判決は、それまでの下級審判決と同じく、アスベスト規制に対する国の不作為責任を認めるために予防原則を根拠としている。フランスにおける予防原則は抽象的にではあるが既に実定法上の法原則である(近時、憲法原則とされることも予定されている)。しかし、抽象的なレベルでの行政の権限行使のガイドラインというだけではなく、具体的な環境に関する国家賠償請求訴訟で、予防原則が、適用範囲においても、その具体的な規範的性格においても大きな意味を持つようになっていることが見て取れる。 次に、我が国との比較であるが、2004年の最高裁判決(関西水俣訴訟と筑豊じん肺訴訟)はいずれも、国の責任を認めている。我が国では、フランスと異なり、環境に関わる訴訟で一般的に行政の作為義務を根拠づける法原則は存在しないことから、個別法の解釈に基づいて行政の作為義務を導出している。しかし、例えば目的規定の解釈に見られるように、単純な比較はできないのはいうまでもないものの、フランスにおけると同様に予防原則などの一般的な環境法上の原則の適用を考える必要性やその余地があるものと考えられる。
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