研究概要 |
"Threshold nonlinearities and asymmetric endogenous business cycles"と題した石田潤一郎氏(信州大学経済学部助教授)との共同論文が査読付学術雑誌Journal of Economic Behavior and Organization, vol.54,pp.175-189,2004に掲載された.また,この論文のひとつの発展として,石田氏とともに執筆した"Heterogeneity-induced chaos : an example"という論文(岡山大学経済学部Discussion Paper Series I-47)は改定中である. 『地域間労働移動と内生的経済変動の発生』(北東アジア経済研究創刊号)では,地域(例えば岡山市)の人口の社会増加数の激しい変動に着目し,世代重複モデルを基礎に,それ変動を説明することが可能な数理モデルを構築し,そのモデルについてシミュレーション分析をおこなった.結果,労働移動を考慮しない経済では定常状態に単調に収束する経済変動パターンしか発生しない経済とは異なり,労働移動の可能性(および経済間の異質性)により,実態経済と整合的とみなしうるような内生的経済変動(周期変動,準周期変動,カオス変動)が生じることが数値計算により明らかとなった. "Contribution cycles and preferable incentive schemes", Okayama Economic Review36,では,金銭的なインセンティブを目当てに雑誌に論文を投稿する一定数の経済主体を想定し,論文1本あたりのインセンティブが一定な場合と,インセンティブの総額が一定で,それらを投稿者の間で分け合う戦略的な場合とで,どのような投稿論文数の時系列が生じ,またどちらのインセンディブスキームが望ましいかを検討した.結果後者の場合,カオス的な投稿循環が発生することが示された.また,後者のスキームが,インセンティブのための予算が少なく,特,にカオスが発生する場合は,論文数に関してより効果的であることが示された. "On dynamic effects of the number of players in a commons game : a tragedy of nutria in Okayama", forthcoming in Okayama Economic Review,では補助金により有害獣であるヌートリアの駆除をおこなう岡山市の取り組みを例に,この補助金スキームを捕獲者をプレーヤー,ヌートリア個体群をrenewable resourceとする一種の「共有地問題」としてモデル化し,そこでのヌートリアの個体群動態を力学系理論的手法を用いて分析した.結果,捕獲者の数の変化に応じて,個体群が定性的および定量的な変動パターンの変化をきたすことが例示された.特に,捕獲者数が中くらいの場合,観測可能なカオス的が生じることが示された.
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