グローバル企業では、税引き後の利益最大化を目指し、財務管理の集中化を実施する企業が増加している。本研究では、全社的観点から実施した場合に効率的な財務管理と、個々の部門管理者の動機付けに基礎を置く責任会計とに着目し両者の関係を分析した。 2001年に実施したアンケート調査を分析した結果、グローバル化が成熟するに従い、子会社への分権化が進むことから、客観的な財務指標が重視されるようになるという仮説は支持されると考えられるとの知見を得た。 本研究においては、日本企業の本社、欧州統括会社、韓国企業の本社を対象に事例研究を行った。その結果、GCMSの利用目的はタックス・マネジメントというより、むしろ、連結での資産圧縮効果や為替リスクを軽減するために使っている企業が多かった。そのため業績評価にはさほど影響を及ぼさないと考えていた。ただし、金属加工D社のように、資金の集中化により大きな資産圧縮効果がある半面、資金が不足すると自動的に貸付が行われるので、子会社の資金管理意識が希薄となっているという大きなデメリットを指摘する会社もあった。 そのような中で、電子機器C社では、コミッショネアー方式を採用して、ビジネスモデルを変更してまで積極的にタックス・マネジメントを実施していた。これは、GCMSにおける資金、為替の集中化を超えて、従来販売子会社が担ってきた、在庫リスク、与信リスクまでも統括会社に集約する仕組みであり、いわば究極の集権管理に近い。その結果、責任単位がプロフィットセンターから収益センターに変更された。GCMSという集中的な財務管理手法が、責任会計に影響を与えるということを見いだしたことが、今回の調査における最大の知見である。 今後の研究課題としては、地域本社の役割の再定義、今回の研究で見いだしたコミッショネアーの研究、海外子会社側からみた研究が必要であると考えられる。
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