研究概要 |
前年度に引き続き,ダブルアフィンHecke代数及び関連する代数の表現について研究を行い,以下の結果を得た. [1]A型の退化ダブルアフィンHecke代数と有理Cherednik代数の関係について: 退化ダブルアフィンHecke代数H^d,及び有理Cherednik代数H^rは,それぞれ対応するダブルアフィンHecke代数のtrigonometric degeneration及びrational degenerationと考えられているが,今回,A型の場合にはH^rはH^dの部分代数であり,しかも,圏Oと呼ばれるH^rの表現の圏から,対応するH^dの表現の圏へ,inductionにより与えられる関手H^d【cross product】_H^r(-)が完全かつfully-faithfulになることが示されたこの対応を用いて,一方の代数の表現に関する結果から他方の結果を得ることができる.特に,前年度得たcalibrated(ある可換部分代数に関して半単純)なH^dの既約表現の分類から,calibratedなH^rの既約表現の分類が得られる.これらの結果は論文 "Rational and trigonometric degeneration of the double affine Hecke algebra of type A" として投稿中である. [2]退化ダブルアフィンHecke代数及び有理Cherednik代数の既約表現のアフィンLie代数の表現を用いた構成及び指標公式: 前年度の研究でA型の退化ダブルアフィンHecke代数H^dのcalibratedな既約表現がアフィンLie代数gl_nの可積分表現の余不変式として表されることが示されたが,類似の構成がrational Cherednik代数H^rに対しても行えることが示された.[1]の結果を用いて,calibratedなH^rの既約表現は全てこの構成によって得られることも分かる.さらに,このクラスのH^d及びH^rの既約表現に関して,各表現のタブローによる記述を用いて,指標公式のKostka多項式による表示を得た.これにより荒川・土屋両氏との共同研究において提起された予想が解決されたことになる.以上の結果については現在論文を作成中である.
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