研究概要 |
本研究の目的は次の予想を解決することであった:Vを高々ログ端末的特異点をもつ射影多様体,LをV上の大域的に生成された豊富なCartier因子,XをVの余次元eの部分多様体とする.このとき全射【symmetry】^m_<i=1>L^<-d>→I_XによりXが定義されていて,a【greater than or equal】1,k【greater than or equal】(a+e-1)d+1ならば,i>0に対して,H^i(V,I^a_X(K_V+kL))=0が成り立つ.この予想は,A.Bertram, L.Ein, R.Lazarsfeldがその共著論文(Journal of Amer. Math. Soc. (1991))の中で,Xが非特異な場合に成り立つことを証明したものである.本年度はこの予想の解決のために,乗法子イデアル層J(e・I_X)とはじめに与えられた定義イデアル層I_Xとの食い違いを記述することを目標としたが,残念ながら現在のところ達成されてはいない.しかし,その研究過程から,A.Bertram, L.Ein, R.Lazarsfeldの共著論文にある非特異な場合の証明のアイデアに基づいて,大域的に生成されたベクトル束に対するP.Griffithsの消滅定理を,極小モデル理論で重要な役割を演ずるログ端末特異点をもつ射影代数多様体の場合に一般化できることがわかった.この研究成果は,「ベクトル束に関するGriffithsの消滅定理について」と題して,2004年8月4日から6日に高知大学で行われた研究集会「小駒哲司先生追悼記念シンポジウム」において発表され,その報告集にも掲載されている.さらに,この成果を論文「A generalization of Griffiths's Vanishing theorem for globally generated vector bundles」にまとめて現在投稿中である. また,研究計画あるように,日本数学会2004年度秋季総合分科会(北海道大学),日本数学会2005年度年会(日本大学理工)などに参加した.特に,9月に京大数理解析研で開催された第13回MSJ-IRI「モジュライ空間と数論幾何」ではいくつかの興味深い講演を聞くことができた.
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