研究概要 |
研究テーマは「アーベル多様体の保形性」である。これは「有理数体Q上定義される楕円曲線はすべて保形性を持つ」という谷山氏村予想と呼ばれる問題に端を発するものである。現在では十分な解決をみたこの予想は、有名なFermat予想と直結して注目を集めた問題であり、1次元アーベル多様体である楕円曲線と1変数保形形式とを結びつける深遠な意味を持つ問題でもある。現在では、この予想の対象がQ上の楕円曲線にとどまること無く、アーベル多様体のより大きな族に拡張されている。 このテーマの下で、とりわけ、 (1)(1,d)型のアーベル曲面のモデュライ空間におけるある性質を満たす有理点の決定 (2)種数2の代数曲線に関するアルゴリズムの開発とその実装 (3)アーベル曲面と2次元ジーゲル保形形式との対応 という問題に焦点を当てて研究を行っている。 (1)の問題については、2次体上の有理点を与えるアーベル曲面や有理数体上定義されるがその自己準同型環が4次CM体の極大整環ではない整環となるようなアーベル曲面の具体例を数多く構成した。また、(2),(3)の問題に関しても、多変数の保系形式のフーリエ係数を計算することにより、いくつかの具体例について取り組んだ。以上の研究成果のまとめとして、3月にカナダのトロント大学で開かれたGANITAセミナーにおいて講演を行った。さらに、これらの結果について論文として纏め発表する予定である。 さらに、8月に広島県福山市で開催した第12回整数論サマースクールでは、90人近い参加者を集め世話人として会を取りまとめた。
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