研究概要 |
(1)Hermite直線束に値を取るCalabi-Yau多様体の不変量を,解析的トーションとBott-Chern二次特性類を用いて構成した.さらに,射影的超曲面のようにコホモロジー環が簡単なCalabi-Yau多様体に対して,上記不変量をスカラー値に簡約させることができる.Calabi-Yau多様体が固定されたFano多様体の反標準因子であるとき,上記Hermite直線値不変量と偏極Hodge構造の比をとることにより反標準系上の関数が定まる.この関数が反標準系の判別式と等価であることを示した. (2)正則対合を持つK3曲面の同変解析的トーションが,モジュライ空間上の保型形式のPeterssonノルムとして与えられることを示した.特に,Enriques曲面のRicci平坦Kaehler計量に関する解析的トーションがBorcherdsΦ-関数のPeterssonノルムとして与えられる.その他に,有理楕円曲面の分岐二重被覆として得られるK3曲面の同変解析的トーションが,26次元BorcherdsΦ-関数のPeterssonノルムとして与えられる.これらのツイスター変形を考察することにより,実数体上で定義された実点を持たないK3曲面のRicci平坦計量に関するラプラシアンの同変判別式が,再びBorcherdsΦ-関数により書けることが従う. (3)孤立臨界点のみを許容する複素多様体からRiemann面への正則写像に対して,Chern多項式の断熱極限を計量に関する適当な仮定の下に計算し,臨界点に台を持つDiracデルタカレントが極限において現れることを見い出した.また,Diracデルタカレントの係数が臨界点のMilnor数で与えられることを示した.
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