本研究代表者は、東京工業大学の小島定吉氏、九州大学の西晴子氏らとの共同研究で、円周上の点の配置空間に自然に定まる双曲構造を定義した。ただし双曲構造を与えるためには元の配置空間に適当な構造(重み)を与えておく必要がある。そしてこの重みを動かすことにより、配置空間の双曲構造も変形され、この変形の様子を記述する研究も行った。より詳しく述べると、点の数が5個および6個の場合は得られる配置空間の次元が2次元および3次元になるため、上記の変形と双曲多様体の変形空間であるタイヒミュラー空間や、クライン群の変形の空間との局所的および大域的な関係について調べてきた。 後者のクライン群の変形については、多様体内の結び目による錘特異点を許す場合の変形がサーストンの双曲デーン手術理論によって与えられていた。それとは別に考えている多様体の無限大の場合の変形で、中でも特殊なクライン群の場合、すなわち1点穴あきトーラスの擬正則変形空間が、ヨルゲンセンが具体的な記述を与えている。これら研究に刺激されて、双曲幾何学において研究が活発に進められてきた。本研究代表者は、大阪大学の作間誠氏、奈良女子大学の和田昌昭氏らとこの理論の精密化の研究を行った。 具体的には、ヨルゲンセンによる1点穴あきトーラスの基本領域の記述の精密化と、これに基づき、ベンディングラミネーションと呼ばれる方法による多様体の記述に関するある予想を提出し、部分的な回答と、計算機実験による検証を行った。
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