研究概要 |
本研究の目的は,統計学的・情報論的な多様体を中心として,関連する分野も含めた総合的な幾何学理論の構築を行うことであった.特に確率密度関数間の収束性に注目し,各種統計モデルの作る統計多様体間に距離を定義し,統計多様体の収束性を解明することを目標とした. この目的に対し研究を進めていく過程で,従来の統計多様体の理論では収束性の解明は不十分で,Finsler幾何学に基づく統計的な多様体の理論が必要であることがわかった.これは,中心極限定理の働かない分布族に対して極限定理を考えると,Fisher情報行列が発散するためRiemann計量が定義できないことに起因している. また確率密度関数族の収束には,多様体の崩壊に類似のものと,崩壊には至らず多様体の変形によって得られるものがあることがわかってきた.このうち前者は二項分布の指数分布近似,後者は指数分布の正規分布近似であると予想している.これら具体例の研究は平成15年度に行う予定であったが,中心極限定理型の収束定理を研究する過程で,これらの事実が判明してきた. 本年度の研究内容は京都大学で行われた研究会において途中経過を報告した.さらなる収束定理の解明に向けて,現在も研究を継続中である.情報幾何学研究の第一人者である甘利先生も,近年統計多様体の崩壊理論の必要性を示唆しており,今後の発展が待たれる研究である.
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