配分額 *注記 |
4,000千円 (直接経費: 4,000千円)
2004年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
2003年度: 1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
2002年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
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研究概要 |
『定磁場に直交する平面内での3体量子力学系に対するスペクトル・散乱理論』 標記の研究において、考える量子力学系の運動を支配するハミルトニアンに対するMourre評価の導出を行った。より具体的には次の通りである。1個の非荷電粒子と2個の荷電粒子からなる3体量子力学系を、定磁場に直交する平面内で考える。また、系の全電荷は0でないと仮定する。この仮定の下で、系のハミルトニアンのスペクトル構造を調べるのに有用なMourre評価を導出した。 Mourre評価はスペクトル理論だけでなく、散乱理論にも応用が効く有用な評価であることはよく知られているが、上記の系に対してその評価が成立するかどうかはこれまで知られていなかった。解析の障害となるのは、系の中に荷電粒子と非荷電粒子が混在していることである。物理的解釈では、荷電粒子及び部分系は磁場によってそれに直交する方向には束縛されるが、非荷電粒子及び部分系は磁場に直交する方向にも自由に動ける。この違いを同時に数学的に捉えることが克服すべき課題である。 部分系に非荷電粒子が現れる系を扱った先行する研究としては、私自身の仕事(J.Math.Sci., The Univ.of Tokyo 8(2001),243-274., Rev.Math.Phys.14(2002),199-240.)があるが、そこでは荷電粒子の個数を1に限定していた。この限定により、系のエネルギーと全擬運動量を用いて、荷電粒子の位置に関する情報を得ることができる。しかし、荷電粒子の個数が2以上になると、荷電部分系の電荷中心の位置に関する情報は得られるが、個々の荷電粒子の位置に関する情報が不足しているというのが、解析の障害となる。上述の研究ではその困難を克服している。 以上の結果について、学術論文による今年度中の発表はできなかったが、東京理科大学、京都大学、筑波大学におけるセミナーでの口頭発表を行った。現在学術論文による発表の準備をしている。
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