研究概要 |
今年度の研究手順の概略は以下の通りである。 1、太陽観測衛星「ようこう」には、4つのエネルギー帯でフレアを観測することができる硬X線望遠鏡が搭載されていた(Lバンド:13.9-22.7keV, M1バンド:22.7-32.7keV, M2バンド:32.7-52.7keV, Hバンド:52.7-92.8keV)。そこで、CMEを観測しているSOHO衛星打ち上げ後の1996年1月から2001年9月の間に硬X線望遠鏡によって観測されたフレアのうちM2バンドで15カウント以上のフレアを選び、[L,M1]と[M1,M2]によるスペクトルインデックス(γ)を調べた。また、γ(M1/L)とγ(M2/M1)の差Δγも求めた。 2、次に経度45度から90度の範囲で発生したフレアを用いて、関連したCMEの有無をSOHO衛星のLASCOを用いて調べた。CMEの発生が見られた現象では、LASCOのCMEカタログのCME高度を参考に、速度、加速度を求め、さらにM2バンドの硬X線放射が最大になる時間の速度と高度を外挿した。 結果は以下の通りである。初めに、実施計画で予測したΔγがプラスかマイナスかでフレアとCMEの関係に違いがあるかについてである。上記の基準を満たしCMEが関係していた14例の解析を行ったが、高度や速度や発生のタイミングに顕著な違いが見られなかった。ところが、γ(M1/L)の値が4.0〜4.3の範囲を境に、減速するCMEと加速するCMEに分けられることが今回新たに分かった。その原因を探るため、Xクラスフレア3例を含む発生経度が45度以下のフレアを4例加え、それぞれXクラス2例、M6.0以上が2例ずつ含むようにした。その状態でも結果は変わらず、このことからX線クラスの強弱が加速・減速の違いに直接関係していないことも分かった。以上のように、今年度の課題研究を通して、今後のCME研究にとって重要な結果を見出すことができた。
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