研究概要 |
本年度も引き続き、既存の観測装置を用いた銀河団の観測的研究と、本格的サブミリ波観測を目指した観測装置の開発研究を並行して進めた。既存装置による観測については、前年度より継続で、国立天文台野辺山宇宙電波観測所45mミリ波望遠鏡による銀河団のスニアエフ・ゼルドビッチ効果(以下SZ効果)の系統的観測を行った。大口径の単一鏡を用いた広域、高分解能のSZ効果の撮像観測は世界的にもあまり例がない。今年度は解析システムも安定し、昨年度に引き続き複数の銀河団からの43GHz帯でのSZ効果の撮像観測に成功した。またChandraによる高分解能X線観測の結果とあわせて解析を進め、現在結果および解釈のまとめを行っている。将来の本格的サブミリ波観測を目指した装置開発においては、チリ・標高4,800mのサイトにおいて、350GHz,650GHz,850GHzに感度をもっ3周波ボロメータシステムの立ち上げと試験観測を行った。今年度は特に冷却系の熱設計を全面的に見直すことで0.3Kのより安定した冷却を可能とし、観測感度を一段と向上させることに成功した。また、この冷却システムが低雑音の信号読み出し系とともに安定した遠隔制御が可能であることも確認できた。望遠鏡搭載の0.3K冷却系の遠隔制御に成功したのはこれが世界初となる。この冷却システムは将来のサブミリ波焦点面アレイにそのまま用いられる予定で、SZ効果やダストの熱放射など、サブミリ波領域での銀河団観測により銀河団進化および物質のinjectionの推移を解明する上で欠かせないものとなる。
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