研究概要 |
本研究では核子あたり5MeV付近の低エネルギー不安定核ビームの生成技術を確立し、それを用いてこれまで困難であった不安定核の共鳴準位の測定を行う。測定によって共鳴準位のエネルギー(E_x)、巾(Γ)、スピン・パリティー(J^π)を決定し、不安定核の構造や宇宙での元素合成過程についての知見を得ることをめざしている。 本年度は東京大学原子核科学研究センターの低エネルギー不安定核ビーム分離器CRIBを用いて核子あたり約4MeV、強度が10^5個/秒程度の不安定核ビーム^<13>Nの生成に成功した。この2次ビーム核種^<13>Nはサイクロトロンにより加速された1次ビーム核種^<13>Cから、逆運動学の^<13>C(p,n)^<13>N反応を用いて生成された。この低エネルギー不安定核^<13>Nビームを陽子標的に照射して、共鳴弾性散乱^<13>Ng+p→^<14>O^*→^<13>N+pの測定を行った。この^<14>O^*(^<13>N+p)共鳴準位のデータは不安定核の構造および天体における高温水素燃焼過程^<13>N(p,γ)^<14>Oの理解に基礎的な情報となる。解析の結果、4つの回^<14>O^*共鳴準位を同定することができた。このうち3つは既知のもので、^<14>OのJ^π=1^-(E_x=5.173MeV)、3^-(E_x=6.272MeV)、および2^+(E_x=7.768MeV)状態である。これが予想どおり観測されたことにより、今回の測定および解析が正しく行われていることの確認ができた。残りの1つの共鳴準位に対しては、今回新たにJ^π=2^-、E_x=6.7MeV、Γ〜150keVと決定された。この結果は、核構造的見地からは、不安定核^<14>Oにおける1粒子軌道の配位を理解する上で重要なデータとなるはずである。また、この新しい準位^<14>O^*(J^π=2^-)がγ崩壊する場合、^<14>O基底状態(O^+)へM2遷移することになるので、その遷移確率はそれほど大きくない。したがって、この2^-状態は、天体核反応^<13>N(p,γ)^<14>Oの反応断面積には重要な寄与をしないことがわかった。
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