研究概要 |
新しい核種や元素の存在を明らかにすることは,原子核が存在し得る限界領域の確認や不安定領域下での核的特性の検証について,新しい知見をもたらしてくれる.とりわけ,中性子不足の軽アクチノイド核種領域には,現在までその存在が確認されていない核種群やその存在が確認されていても壊変特性データが未解明である核種が数多く残されている.さらに,この核種領域のα壊変特性データは,超アクチノイド元素の原子核質量を決定する上で重要な鍵を握っている.本研究では,特に中性子不足アクチノイド核種のα壊変特性データに着目して研究を進めている. 本年度は当該研究題目の最終年度にあたるので,本研究の総括を含め本年度の研究実績を報告する.本研究の初年度とその次年度の経費により高効率α検出器チェンバーの作製と試験を行った.この開発費用には9台のα検出器(浜松ホトニクス社製 Si PIN-Photodiode S3204-09)を含み,これらは検出器チェンバーシステム内部に組み込んだ.最終年度はこの開発した装置を使用して,これまでにEC壊変によって同定できた新核種^<241>Bkに対して,その微弱なα壊変の検出を試みた.しかしながら,非常に低いα壊変分岐比のためにその事象を確認するには至らなかった.そこで,この核種よりもさらに重い核で,かつその壊変過程に興味が持たれる超アクチノイド元素^<261>Rfのアルファ壊変の娘核種である^<257>Noの壊変のα-e同時計数測定(アルファ壊変-内部転換電子)の実験を行った.オンライン実験は原研タンデム加速器のオンライン同位体質量分離器を用いて,^<248>Cm(^6Li,4n)反応による^<257>No(半減期25秒)を合成し,放射線測定を行った. この結果,^<257>Noのα壊変に伴う125keVと77keVのγ遷移に対応する内部転換電子を観測し,L電子線の強度からM1遷移であることを同定した.また,これら核反応実験を進めていく上で,高品位のターゲットが要求されるので,そめための電着セルセット及びターゲット物質の純度化を目的とした化学分離法の開発を行った.本研究の研究報告では,日本放射化学会年会で発表を行い,これまでの中性子不足アメリシウム同位体の壊変特性について,アメリカ物理学会のPhysical Review Cなどに投稿発表を行った. また本年度では,これまでと同様な実験を行うことができる理化学研究所加速器施設及びホット化学実験室の整備を進め,原研での限られたオンライン実験日程の充当を行った.
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