研究概要 |
1.アイコサヘドラル準結晶の解析 Zn-Mg-Y系アイコサヘドラル準結晶はX線回折等により構造解析がなされ,いくつかの構造モデルが提案されている.しかしながら,X線回折では重原子であるYからの寄与が大きく,軽原子であるZnとMgの区別は困難であるため,ZnとMgを区別した精度の高い解析はなされていなかった.今回Zn-Mg-Y系アイコサヘドラル準結晶の電子チャンネリング図形を撮影し,全ての原子がケミカルオーダーしていることを見出した.さらに種々の入射方位で得た図形とモデルとの比較から妥当なモデルの決定を行なった. 2.シミュレーションプログラムの開発 マルチスライス法にもとづいた準結晶のチャンネリング図形のシミュレーションプログラムの作成を行なった.これまでのマルチスライスプログラムは周期系に対するものであるため,準周期系に対するものへの改造を行なった.現状ではまだテスト段階であるが,今後定量的な解析のために必要な改良を行い,将来的には本研究手法が原子弁別性を備えた精度の高い準結晶の構造解析手法となることを目指す. 3.国内外の学会での成果発表 2003年非周期国際会議(ベロ・オリゾンチ,ブラジル)に参加し,デカゴナル準結晶に関する成果の報告をおこなった.また電子顕微鏡学会および物理学会物理学会にてAl-Cu-CoおよびZn-Mg-Y系のケミカルオーダーに関する研究発表を行った. 4.新検出器導入の検討 特性X線を高効率で検出可能なシリコンドリフト検出器の導入をある電子顕微鏡メーカーと検討した.対物レンズ周辺の改造により検出立体角をこれまでより一桁増大することができ,その結果極めて高い検出効率でデータ取得が可能であることが確かめられた.この検出器導入による装置の高効率化は今後の課題である.
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