研究概要 |
「YbXCu_4の高圧下物性測定」 YbInCu_4は常圧下約40Kにて一次の価数転移を示す物質であるが、その転移は圧力によって抑制されることが報告されている。本研究の高圧下交流帯磁率測定等によって、この物質の高圧下安定相の基底状態が強磁性秩序状態であることが明らかになり、圧力-温度相図が作成された(Phys.Rev.B67,224409,2003)。又、この磁気秩序転移に関して微視的な磁気的情報を得るために、2.5GPaまでの高圧下NQR(核四重極共鳴)測定を行った。その結果、2.5GPaにおいて価数転移は微視的な観点からみてもほぼ完全に抑えられており、又、この価数転移は、完全に抑制される直前の圧力まで一次相転移的であることが分かった。更に、圧力誘起磁気秩序転移は4fホールが局在性の良い状態で生じていることが分かった(Phys.Rev.Lett.に投稿中)。現在、高圧下におけるNMR(核磁気共鳴)測定が進行中である。 「V_2O_3の高圧下NMR測定」 V_2O_3は常圧下約170Kにて金属-絶縁体転移を示す物質であるが、その転移は圧力によって抑制されることが分かっている。この物質の圧力誘起金属状態は軌道の揺らぎ等の観点から非常に興味が持たれているが、実験的な難しさからこれまでに詳しい研究は為されていない。本研究では、この金属相における磁気的情報を得るために、純良な単結晶試料を用い、更に外部印加磁場に対して精密に角度制御した高圧下NMR測定を行った。その結果、1.95GPaの高圧下において試料の約10%程度が低温まで金属状態を保ち続け、その部分において測定された核スピン-格子緩和時間T_1やナイトシフトの温度依存性には、以前粉末試料を用いて測定された報告と同様に低温での異常が観測された。しかし、ナイトシフラトの異常には圧力依存性がないのに対して、T_1の以上には圧力依存性があることが分かった。現在、2.4GPaの圧力下において測定が進行中である。
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