配分額 *注記 |
3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
2004年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2003年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2002年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
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研究概要 |
旧来の熱力学,統計物理学の研究対象(及び理論)は,モル数程度に十分多数の粒子の存在,すなわち熱力学極限を(多くの場合)仮定してきました.しかるに,近年の生物物理学の進歩は一分子の直接観察を可能とする段階に達しました.そのため,一分子実験の記述に統計物理学が使えない,という事態が発生してきました.この背景の下,少数自由度(一分子)の熱統計物理学の研究を行いました.カルノーサイクルの作業物質を一分子にした場合の不可逆性の起源,マクロ系とは異なる準静的過程の条件(定義)を明らかにしました.さて,一分子の熱力学は,一方では「マックスウェルの悪魔(のパラドックス)」として,一世紀以上前から議論が行われてきました.近年のLandauerらの議論も含めて,これらは全て1929年のSzilardの議論の枠組に基づいています.応募者はSzilardのモデルを,運動論的に閉じた記述から再検討し,その議論の根本的誤り(前提の不成立)を示しました(数値実験,Master方程式,及びpressure ensembleを用いた解析計算のいずれによっても,一致する結論を得ています.Lebowitz氏に助力を頂いています).一分子系では,準静的過程,仕事溜等の概念を,マクロ系からそのまま敷衍することが出来ないことに誰も気づかず,75年間,議論が積み重ねられたのでした. 現在,本研究を発展させるため,生物における少数自由度系の分子機械メカニズム解明のため,生物物理学者と共同で研究を始めており,その結果も近く公表できると考えます.
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