研究概要 |
可変型center axiconを持つW-axicon共振器でのレーザー発振に成功した.本年度はまず,ポンプパワーが共振器の損失を上回れない問題を解決するため,励起LDを2W級(Hamamatsu L8828)×2の並列とし,W-axicon共振器は誘電体多層膜コーティングを施したものを再度製作した.しかし,製作した共振器は,角度が設計値(45度)に対して0.025度の誤差があり,最も空隙が小さい発振モードでも直径が5mmを下回わらないことがわかった. 一方,Nd:YAG結晶の小信号利得を励起範囲直径1.0mmで計測したところ一往復あたり12.1%という結果を得た.これは,発振モードの直径が3mm以下なら充分共振器の損失を上回る値だが,前述のように共振器のモード半径が5mm以下にならないため発振は不可能である. そこで,YAGレーザーでの発振を断念し,色素をレーザー媒質として提案した共振器が機能することを実証することとした.共振器は平成15年度作成の金コート,色素は媒質長2.0mmのセルに充填した140mg/lのSulforhodamine 101で,これを5〜10mJ/pulseのSHG YAGで励起した. その結果,理論計算と一致する円環状のレーザー出力が得られた.遠視野パターンを取得したところやはり円環で,理論通り高次Laguerre-Gaussianモードで発振していることが確かめられた.W-axiconの中央コーンを前後にスライドすることにより円環の中央空隙は近視野でほぼ0から5mmの間で任意に制御できた.図らずも,「レーザー媒質を選ばない」本研究提案の光共振器の特徴が実証された形となった. まとめると,原子捕獲を前提に,近視野でも遠視野でもドーナツ型でかつ空隙の直径が実時間,任意に可変のビームを生成できる可変W-axicon型共振器を理論計算により提案,レーザー発振実験を行い理論計算の正しさを実証することが出来た.今後は固体媒質による連続発振でその実用性を実証するとともに,研究中に明らかになった「径方向電場を持つ円環ビームの集光」の持つ様々な興味深い現象について,開発した共振器をツールとして使い追求して行きたい.
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