研究概要 |
本研究は2年計画であり,本年度は残留磁化測定,岩石磁気学的検討,データ解析に重点を置いた. 愛知県鳳来町の川売セクションで地質調査を行い,岩相層序と地質構造の理解に努めた.本ルートの中新統(設楽層群)は,下半部が凝灰質な砕屑岩(北設亜層群の門谷層)からなり,上半部が珪長質火山岩類(南設亜層群の尾籠層,大島川層,明神山層,鳳来湖層)からなる.古地磁気方の傾動補正に必要な地層傾動に関するデータを全層準から得ることができた.門谷層は18〜17Ma前後に形成されたらしいこと,及び南設亜層群は約15Maに短期間のうちに一気に形成されたことがFT年代測定によりわかった. 昨年度充実させた磁気測定装置を用いて残留磁化測定と岩石磁気実験を行った.サンプルは合計40地点から採取された.詳細な段階消磁を適用することで,門谷層砕屑岩の7地点,北設亜層群火山岩類の22地点,合計29地点で,傾動補正された地点平均古地磁気方位が決定された. 門谷層の古地磁気方位は逆帯磁を示し,偏角は約30゜の時計回り偏向を示した.伏角は本地域で期待される値とほぼ同じであった.このことは門谷層の堆積(18〜17Ma)以降に本地域で約300の時計回り回転運動が起こったことを示す.それに対し,南設亜層群(15Ma)の古地磁気方位は正帯磁と逆帯磁の両方があり,偏角は有意な偏向を示さなかった(伏角は期待値とほぼ一致).従って,調査地域での時計回り回転は約17Ma〜15Maに限定される.この回転は日本海の形成に関連する西南日本の回転運動であると考えられ,本研究によりその年代が明瞭になった.
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