研究概要 |
平成15年度は,有珠山と三宅島で2000年に発生した水蒸気爆発およびマグマ水蒸気爆発を題材に,研究課題に取り組んだ.特に有珠山については,2000年3月31日のマグマ水蒸気爆発を事例に,昨年度検討できなかった噴出物質中の本質マグマの含有率の変化と,実際の噴火現象との関係を議論した. 平成14年度の成果により,有珠山で2000年3月31日に発生したマグマ水蒸気爆発は,降下火砕堆積物だけでなく火砕サージも発生し,複雑な推移を辿ったことがわかっている.この推移は,大局的には地表に放出される本質マグマ物質の割合(〜マグマ物質の噴出率)に依存すると予想されるため,本年度は火口から約500m離れた地点において採取した火砕堆積物を用いて,本質マグマ物質の割合の時間変化を求めた.その結果,本質マグマ物質の割合は20〜50%の範囲にあるほか,噴火の初期に低く(<30%),噴火の後期にやや高く(40%<)なる傾向を持つ.またこの値は,実際に観測された噴煙高度と強い相関を示し,噴煙高度はマグマ物質の噴出率に依存することが確認された.これは,噴火の激しさを火砕堆積物の特徴から記述できただけでなく,噴煙柱のダイナミクスモデルの妥当性を,堆積物から検証することができた数少ない事例といえる. 一方,三宅島2000年噴火については,火山ガスを放出する活動が継続しているため,上空から活動を観測するにとどまった.三宅島では,2003年3月にやや規模の大きなカルデラ壁の崩壊があったものの,活動自体は低調であった.観測の結果,島民の帰島の妨げとなっている火山ガスは,カルデラ南東にある主火口付近から直接放出されていること,そしてガスの1日あたりの放出量は,僅かながら減少傾向にあることがわかった.これと対応するかのように,噴煙高度も下降しており,長期的には三宅島の火山活動は終息に向かいつつあるといえる.
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