研究概要 |
平成16年度は,ODP Leg 199 Site1216のコアを対象として得られた平成14年,15年度の研究結果についてのまとめを行い,考察を深め,かつ補助的な実験を行った。以下にその概要をまとめる。 本コアは全長62.2mであるが,ドリリングの乱れが少ない上位35m部分に関して,堆積物の全岩化学分析およびマイクロノジュールの抽出,鉱物・化学分析を行った。その結果,以下の点が明らかとなった。 堆積物のマンガン濃度は下位で高く,一方,抽出されたマイクロノジュールの頻度は,上位で高い。このことは層準によるマンガンの存在状態の違いを意味しており,上位では直径0.1mm以上のマイクロノジュール,下位では細粒堆積物への薄いコーティングとして存在していることを示唆している。 マイクロノジュールは大きくType AとType Bに分類にされ,Type Aの産出頻度が高い。Type Aは粗い表面組織を持ち,高いMn,Si,Al,Mg,Ca,K,Ni濃度を有する。また,正のCe異常を有する。一方Type Bは平滑な表面組織を持ち,高いMn,Fe,Si,Al,Mg,Ca,Ti濃度で特徴づけられる。 堆積物の全岩化学組成のFe/Ti-Al/(Al+Fe+Mn)図プロットにより,このコアは41.52mbsf〜30mbsfの部分は,熱水活動の影響を強く受けていること,またその層準から上位に向けて,熱水活動の影響が徐々に小さくなっていること,が示唆された。本コアにおいては,この熱水活動起源の元素供給の漸次的な変化と,古海洋学的な要因による元素供給の変化の両シグナルの分離が難しい。
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