研究概要 |
1.サンゴ礁海域に棲息する有孔虫類の炭酸塩生産力に関するこれまでの研究成果をまとめた(藤田,2003).その結果,有孔虫群集の炭酸塩総生産量は1.2-2800g CaCO_3/m^2/yrの範囲に,種個体群の総生産量は50-600g CaCO_3/m^2/yrの範囲にあることを明らかにした.しかし,従来の見積もりには仮定条件や算出式に問題があるため,今後生態学的根拠に基づいたデータを追加し,地球規模の炭酸塩生産量における貢献度を再評価する必要があることを指摘した. 2.サンゴ礁島棚域に棲息する大型有孔虫群集の炭素生産量を定量的に評価するため,長崎丸RN03航海の機会に,オケアングラブ採泥器を用いて宮古島西方島棚域の表層堆積物を定量採取した(中村ほか,2003).その結果,水深94mと64mの2地点で表層堆積物の定量採取に成功した.そして,CycloclepeusやOperculinaを主体とする大型有孔虫群集の棲息密度を明らかにした.今後は,得られた生体・遺骸個体を用いて無機・有機炭素の生産速度を測定する予定である. 3.西太平洋のサンゴ礁礁原で棲息密度が高く,基礎生産量が未知である大型有孔虫Baculogypsina sphaerulataを対象として,微小酸素電極装置を用いた光合成・呼吸速度の測定を試みた.その結果,純生産量はプラスとなり,従来の結果とも比較できる値が得られたが,無菌条件下ではないことや得られた値にバラつきがみられることに問題が残された.今後は,手法や測定装置をさらに工夫し,より厳密な測定を試みることで,サンゴ礁生態系の基礎生産における大型有孔虫の位置づけを正確に評価したい.
|