研究概要 |
高圧合成実験からMgに富んだ非化学量論的組成を持つMgSiO_3-MgAlO_<2.5>系ペロブスカイトの存在が明らかとなった。そこで、そのようなペロブスカイト中におけるAlの置換機構の詳細をさらに解明することを試みた。酸素欠陥を持つと考えられるMgSi_<0.9>OAl_<0.1>O_<2.95>ペロブスカイトの格子定数は、a軸とc軸に関して酸素欠陥のないMg_<0.95>Si_<0.95>Al_<0.1>O_3ペロブスカイトと同じであるが、b軸に関してはより小さい。MgSi_<0.9>Al_<0.1>O_<2.95>ペロブスカイトのX線回折パターンのリートベルト解析は、SiO_6八面体が変形していることを示している。この変形は、上述のユニットセルのb軸方向の縮みと調和的であり、酸素欠陥により引き起こされていることが示唆される。 また、27GPaにおけるMgSi_<1-X>Al_XO_<3-X/2>ペロブスカイトの1400℃でのAlの固溶量はX=0.07(1)、一方1800℃ではX=0.09(2)であったことから、温度上昇に伴いAl固溶量が増加するという温度依存性を持つことが明らかになった。さらに、組成の解析から、1400℃試料中のAlの酸素欠陥置換成分はX=0.03,チェルマク置換成分X=0.04、であった。一方、1800℃試料のAlの酸素欠陥置換成分はX=0.03,チェルマク置換成分はX=0.06であった。このことから、酸素欠陥置換によるAlの最大固溶量は約X=0.03であり、それ以上のAlはチェルマク置換により固溶していることが考えられる。さらに、Alの固溶量がX=0.05である酸素欠陥ペロブスカイトの^<27>Al-NMR測定結果をX=0.1ペロブスカイトのものと比較すると、8配位サイト中のAlのシグナルは完全には消失していないものの、6配位サイトのものに比べ相対的に低下していることが示された。この結果は、酸素欠陥置換によるAlの最大固溶量がX=0.05より少なく、それ以上のAlはチェルマク置換により固溶していることを示唆しており、組成解析による結果を支持している。
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