研究概要 |
生体内で働いている蛋白質分子は水溶液中で揺らいでいる。それゆえ個々の蛋白質を見たとき、その電子状態、エネルギーバンドや分子軌道等は一定の状態ではなく、時々刻々と変化し揺らいでいるはずである。水中のミオグロビン蛋白質を最終的な目標とし、電子状態がどのように変化しているかを調べ、蛋白質のダイナミックな側面を電子状態の観点から見出すことを目的とする。そのために、古典的なシミュレーション計算から揺らいでいる一連の瞬間的な構造を得る。そして各瞬間的な構造について、蛋白質のための全電子状態計算プログラムProteinDFを利用して電子状態を求めることで、そのダイナミックスを調べる。この時、周囲の水分子の効果を点電荷として取り込んだ近似を行う。 全電子状態という大規模計算を行なうため、HITACHI SR8000(1ノード)に、ProteinDFプログラムの移植を行ない、ヘム錯体(bis (imidazole) porphinato iron)等について,テスト計算を行った。Version 0.8bの移植後、最新のversion 0.9.9を入手し移植・テストをしている。一方、周囲の水分子の効果を点電荷として取り込んだ近似計算が実行可能であることを確認した。一連の瞬間的な構造を古典シミュレーションから求めるため、ヘムの高精度力場パラメタについての最近の文献を調査した。現在、プログラムCOSM0S90を使用したヘムの水中シミュレーションを準備している。その結果得られる瞬間的な構造について、水分子の効果を取り込んだ一連の電子状態をProteinDFにより求める。
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